kao初ライブ「Drop」レポ@下北沢SHELTER

滋賀県のロックバンド・街人が2021年4月16日のラストライブをもって解散し、街人のボーカルとベースを含むメンバーで4ピースバンド・kaoが結成されました。2021年12月14日に開催されたkaoの初ライブ「Drop」をレポートします。

もくじ

1.はじめに
2.ライブレポ
3.まとめ

□1.はじめに

筆者は文章を書くのが好きなただのファンなので、気楽に読んでいただければ幸いです。

ボーカルとベースの前身バンドである街人については、解散ツアーのライブレポ記事が1本ありますので、そちらを読んでいただけると分かりやすいと思います。
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□2.ライブレポ

2021年12月14日、下北沢SHELTER。kaoの曲が1曲も解禁されていなかったタイミングでチケットは売り切れていた。街人ファンがこの日を待ちわびていたことがよくわかる。

会場が暗くなり、SEとともにベース・ドラム・ギターのメンバーが登場。街人として馴染みのあるベース・レジェさんの姿を見て安心感を覚えた。そして、ボーカルのともさんが登場。パーマをあててかっこよくなっていた。noteでともさんの抱える苦しみや思いが綴られた文章を読んだ後だからなのか、存在感を強く感じた。

ともさんから発せられる「東京都のkaoです」という挨拶に新鮮さを感じた。「滋賀県ロックバンド街人です」という言葉を聞きなれていたからこそ、新しく始まるんだなというかんじがした。

運命の1曲目は『telepath』。MVで公開されていた唯一の曲だ。もちろんこの曲で始まるだろうと思っていたから意外ではない。むしろこの曲しか公開されていない。なのに、自分の感情があまりにも大きく揺れたからびっくりした。MVで何度も聴いた、この曲が1曲目なのも想像がついた、なのに感情が大きく揺れたのは、爆音だったからだ。爆音の中に、ともさんがいる。

街人が解散したとき、プロではなく趣味になるかもしれないが、ともさんがどこかで音楽を作り続けてくれたらいいなと思った。ともさんの生歌をもう聴けないかもしれないという覚悟はしつつ、復活するとしたら弾き語りなんじゃないだろうかと想像したりしていた。自分のペースでできる弾き語りを選ぶ気がした。

だからこそ、バンドで鳴らす爆音のなかにともさんがいる光景を思い浮かべていなかった。心の準備ができていないまま、ライブハウスでいきなり爆音のなかにいるともさんを見てしまった。自分の感情が大きく揺れて、嬉しさがじわっと心の中に広がるのがわかった。なんて爆音が似合うんだろう。バンドという一番戻ってきてほしかった形態で戻ってきた事実をこのとき本当の意味で理解した。

久々のライブだったが、ともさんは落ち着いているように見えた。街人の経験がともさんの中に積み重なっているのがわかった。

『telepath』のMVが青系統だったのもあって、kaoのイメージカラーは筆者の中で青だった。ライブで見たときに思い浮かんだのは、深海。深いところまで沈んで、息のできないところまで行って、よくわからない大きな深海魚に怯えながら真っ暗な海の底で過ごして、そういう景色を見た上で、なんとか水面にまた上がってきた、そしてこの音を鳴らしているように見えた。

そんなことを考えていたが、ステージの照明がオレンジに輝いたとき、思考が切り替わった。青のイメージだったけど、なるほど、オレンジかもしれないと思った。深海に沈んでいく音楽ではなく、水面に上がってきて鳴らしているのだから、青じゃなくてもっと眩しくてもいいはずだ。暗い青を知ったうえで鳴らされるオレンジの曲かもしれない。

2曲目は新曲。というか『telepath』しか公開されていないので2曲目以降はすべてが新曲だ。何曲目の曲がどれというのがわからないので記憶が曖昧なのだが、ごりゅごりゅしたかんじの曲があった(どれだよ)。心の中をごりごりと混ぜられるようなかんじ。

街人はまっすぐなロックンロールや優しくなでてくれるような曲たちだったから、新しい一面を見た気がした。一曲演奏されるたびにkaoはこうくるのか!とワクワクしっぱなしだった。ライブ中ずっと楽しかった。ともさんも楽しそうで、叫んだり、レジェさんの方へ寄って向かい合って弾いて笑ったり、バンドでなければ見れない光景が広がっていた。

最初の方のMCでともさんは「ここまで早かったといえば早かったし、長かったといえばとても長かった」と語った。「今日のことを忘れたくないから噛みしめながらやりたい」とも言っていた。

それから、とても嬉しいMCがあったのでニュアンスでここに残す。記憶で書き起こしているため、一言一句正確ではないことを承知した上で読んでほしい。

「街人をやっていたから分かるけど、それぞれの好きな音楽があって、どれも正解で。街人から好きでいてくれたから、受け入れられない人もいるだろうし、意外といけるじゃんって人もいるかもしれない。でも、今までやりたかったけどやめていたことを今はこの4人でできてる。あんまり聴かないジャンルかもしれないけど、もっと知ってほしいなって思う。俺の好きな音楽をやれてるから、新しい音楽を好きになるきっかけになるようなバンドになれたらと思ってる。」

この言葉が筆者はとても嬉しかった。この日のライブがワクワクしっぱなしだったのは、ともさんの新たな一面を一曲ごとに見れた気がしたからだ。やりたかったけどやめていたのは、何かストッパーがかかっていたのだろう。「街人らしくない」とかこう、いろいろ気にかかる要因があったのかもしれない。ストッパーが取り外されたときの表現者ってとっても素敵なのだ。いきいきしている、きらきらしている、見ていてワクワクする。私、kaoのこと、とっても好きなのかもしれない。

この日は新曲で新たな一面を見まくったライブだったのだが、既存曲が一曲だけあった。筆者は初めて聴く曲でもライブではなんとなく体を揺らしながら聴くタイプなので、普通に揺れていたのだが、なんかすごい馴染む、初めてなかんじがしない、と思いながらイントロを聴き、「違う、これ新曲じゃない、ポラリスだ…」と気づいた瞬間に目が潤んだ。何度も聴いた街人の曲だった。どうりで馴染むはずだ。

街人の解散ツアーの名古屋公演で聴いたのが印象に残っていた。あのときは閉店が決まったアポロベイスで、解散が決まった街人が鳴らしていた。ポラリスを演奏するkaoを見ながら、アポロベイスという箱は変わらず潰れる予定だし、街人というバンドは解散したけど、人は潰れないんだと思った。

いや、潰れるときはあるので、潰れないというと語弊がある。なんというか、終わったとしても始まりの線をもう一度引けば、そこがスタートラインになって人はまた始められるんだなと思った。そんなことを考えながら聴いたポラリスだった。

街人の曲のなかでいちばんkaoの音楽に近いのはポラリスな気がする。綺麗な音が入ってて、ちょっと切ないかんじというか。ポラリス、とても素敵な曲なのでこれからもライブでやってくれたらとても嬉しい。前身バンドの曲を1曲あるいは数曲だけ連れていくのは、前の活動を今のメンバーが認めていることが伝わるのでとても好きだ。

そうそう、メンバー紹介もあった。

ギターは顔立ちのはっきりしたお兄さん。ギターのところにマイクがなくて、ボーカルのマイクを使って自己紹介。ボーカルのマイクの前にボーカル&ギターが並んでいたのが漫才師みたいになってておもしろかった(笑)あと、「奥さんが…」と話し始めたので「既婚なんだ!」と思ったけど、奥さんはともさんのことだった(※ボーカル:奥智裕)。

髭を生やしていたからダンディなかんじなのかと思いきや、喋ったらほんわかした人だった。「話すことって別にないですよね」と照れつつ、「新潟出身です」と自己紹介していたが、「昨日と全然違うじゃん!毎回小ネタ挟もうかなとか言ってたのに!」とともさんにつっこまれていた。この日は照れていたけど、たぶんおもしろい人だ(確信)

ベースは街人でおなじみのレジェさん。相変わらずの穏やかな笑顔で「覚えてますか~?」とにこにこ。(もちろん覚えてるよ)と心の中でつっこみながらつられてにこにこしてしまったお客さんは多かったはず。街人から好きでいてくれて嬉しい、感謝に尽きるという内容を話しながら、「俺声小さっ」と小さい声でつっこんでいた。たしかにコソコソ話みたいになってた(笑)

ドラムのところにはマイクがなかったのか、地声で自己紹介。ドラムの位置から地声で自己紹介ができるのは小さなライブハウスならでは。大きな声で話している姿をみて(がんばれ!)と謎に応援の気持ちになった人は筆者だけではないはず(笑)「街人でがんばっているのを知っていたから、自分が一緒にバンドをやることになるなんて思わなかった」という内容の話をしていた。

メンバーがそれぞれ話し終えると、「メンバー、いいかんじでしょ?」と言ってともさんが笑う。間違いなくいいかんじである。おだやかで人のよさそうなメンバーたちだった。

それから、ギターの人が「おやすみって言うから、ごめんねって返してもらうコール&レスポンス」を提案していたというおもしろエピソードがともさんから語られ、会場から笑い声が。街人のファンにだけおもしろさが伝わるコール&レスポンス(笑)

ギターの人を見て「俺そのコール&レスポンスちょっと見たかったなあ~」と笑うともさんが無邪気でかわいい。「いや、タイミングが…」とゴニョゴニョするギターの人もかわいい。

まじめなライブレポに話を戻す。MCで語られたkaoというバンドが目指すものを以下にまとめる。

・時代の流れはとても早いけど俺らは動かない木でありたい。ユートピアをつくりたい。
・kaoの由来は中国語の。「頼る」「寄りかかる」という意味の言葉。しんどくなったときに頼ってもらえるようなバンドになりたい。
・暗闇にいたとき、みんなが待っててくれたから、今度はみんなを照らせるように。

個人的には早い時代の流れから隔離して守ってくれるシェルターみたいなバンドだなと思ったので、シェルターという名前のライブハウスで初ライブを迎えたのがとても良いなと思った。これからはkaoが動かない木として、いつでも寄りかかれる存在として、ライブハウスで構えていてくれる。どんなに心強いだろう。バンドの始動が本当にうれしい。

そして最後の方に演奏された曲がとても心が楽しくなる曲で大好きだった。ハッピーニューイヤ~~~!!!の瞬間に爆音で聴きたいなと思った。(※筆者の感性はあてにしない方がよい)

終演後は会場が拍手に包まれ、そのままアンコールを望む手拍子が鳴る。

アンコールに応えてメンバーが再登場。ともさんは「今日…今日ほんと緊張した…」と振り返った。そして「ぜんぶ新曲だもんね、みんなもなにがなんだかわかんなかったでしょ。曲も作り立てだから歌詞覚えるところからだし。俺、英語はすぐ覚えられるんだよね。」と喋る喋る。「英語は間違えてもみんなわからないでしょ?」といたずらっぽく笑うともさんに会場から笑い声。

街人の経験もあるし、落ち着いてるな~どっしり構えてるな~と思いながらライブを見ていたけど、実のところ緊張していたから落ち着いているように見えたのかもしれないとリラックスした様子で話すともさんを見て思った。

そして、「きょう迎えられてよかった~~~~」と心からそのまま吐き出すように一言。フロアに向かって「ほんとありがとね」と一言。その言い方が友達にいうみたいな言い方でとても嬉しくなった。ありがとうはこっちのセリフだ。

ともさんの表情がとても晴れやかで嬉しかった。街人のラストライブでもスッキリした表情をしていたが、この日は終わるときのすがすがしい表情ではなく、始まるときの晴れやかな表情をしていた。人が何かを始めるときの表情ってなんでこんなにワクワクするんだろうか。

ライブの帰り道、おめでとうの気持ちで心がいっぱいになって今日はケーキを買って帰ろうと思った。(※現実:コンビニ2軒行ったけど良いのがなくて諦めた)

□3.まとめ

ここまで読んでいただきありがとうございました。この日の光景や感情を残しておきたくて文章にしました。kaoを知らずにこの文章を読んだ方がいらっしゃいましたら、ライブの夜に1曲だけサブスクが解禁されましたのでそちらをぜひ聴いてみてください。良いバンドになっていく予感がしています。
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