CRYAMY ONEMAN LIVE「建国物語・〆 『建国』」ライブレポ

2022年2月11日(金)は祝日“建国記念日”。この日に恵比寿LIQUIDROOMにて開催されたCRYAMY ONEMAN LIVE「建国物語・〆『建国』」をレポートします。

もくじ

1.セットリスト
2.ライブレポ
3.まとめ

□1.セットリスト

1.ディスタンス
2.Sonic pop
3.戦争

4.変身
5.鼻で笑うぜ
6.普通

7.HAVEN
8.雨
9.やってらんねー
10.くらし
11.月面旅行
12.ALISA
13.誰そ彼
14.プラネタリウム

15.テリトリアル
16.crybaby
17.ten
18.完璧な国

アンコール
19.twisted
20.まほろば
21.WASTAR
22.世界

□2.ライブレポ

2021年5~11月にかけて開催されたツアー「建国物語」の最終公演で解禁されたワンマンライブ、「建国物語・〆『建国』」。この日をずっと楽しみにしていた。「建国物語」の最終公演があまりにも良いライブだったからこそ、今の完成度のCRYAMYがワンマンライブをしたら、一体どうなってしまうのだろうと期待が膨らんだ。

年明けからコロナが第6波に突入し、筆者はライブへの参加をしばらく自粛していた。CRYAMYのライブは11月の最終公演以来、行けていなかったから数か月ぶりになる。ライブの本数を減らしたとしても、「〆だけは必ず行く」という特別な思いを懸けていた。

しかし、コロナの感染者数はどんどん増え、ライブ当日は大雪になるのではないかという予報も出ていた。コロナの状況次第で突然延期になるのではないか、大雪で交通機関がストップしないか。不安要素のオンパレードだった。行くまでのハードルが高かったのも相まって、この日を迎えられたことに異常な感動があった。

さて「建国物語・〆『建国』」の幕が上がる

心臓が痛くなるほどの緊張感に息をのむ。

メンバー全員が登場し、1曲目はディスタンス。今流せる人は流してほしいのだが、ディスタンスのイントロを思い浮かべてほしい。最初の「ダァンダァンダァン、ダァンダァンダァン」。このたった6音で目が潤んだ。視界の端には、泣き崩れる大切な友人の姿。ライブ冒頭のたった6音で目が潤んだのは初めてだった。音源はいつでも聴けるが、この爆音はここでしか聴けない。友人と並んでこの日この場所に居ることの奇跡を思った。

2曲目はSonic pop。ディスタンスとSonic pop、苦しみながらもがき狂うような2曲が連続したときの破壊力を想像してほしい。そしてSonic popの「どこにでも連れていけるよ」という歌詞が、「どこででも生きていけるよ」という言葉に変えて歌われた。カワノさんの歌う「生きる」の威力って、強烈なのだ。「どこにでも連れていけるよ」は、言葉を補えば「苦しい場所ではない場所に君を連れていけるよ」になるような気がする。つまり、「苦しい場所から逃れられる」という逃避としての希望を与えるような言葉だと思う。でも「生きていけるよ」という言葉は、逃避ではなく、むしろ「生」と向き合い、「生」に挑むための背中を押してくれるような言葉だと思う。一緒に逃げてくれるCRYAMYも好きだが、一緒に闘おうとしてくれるCRYAMYもいる。これがどれほど心強いことか。

戦争変身鼻で笑うぜ普通HAVENやってらんねーくらし。間にMCを挟みながら、この順番で演奏された。文字数が大変なことになるので割愛させてもらうが、一言でいえば、とてもワンマンらしい選曲。CRYAMYの音楽をじっくり味わえる至高の時間だった。これらの曲が好きな方は、ぜひワンマンを見てほしい。

噛みしめながら聴いた結果、筆者は「変身」と「鼻で笑うぜ」の歌詞解釈が変化した。ライブを見ていると、「この歌詞ってこういう意味なのかもしれない」と突然思いつくことが結構あって、それが非常に楽しい。MCから解釈が進むこともあれば、身振り・表情・声の出し方で解釈が変わることもある。歌詞解釈が好きな方がいればぜひ語り合いたい。

次に演奏されたのは月面旅行なのだが、演奏前にカワノさんのMCが入った。要約した内容を以下に記すが、あくまで要約でありニュアンスだということを承知の上で読んでほしい。(実際のMCはYouTubeにライブ映像があがることを期待している)

「これまで月面旅行は、現実は苦しく、先は見えず、希望がない。そうしてどん底に落ちてしまったとしても、僕がいますよと、そういう思いで歌ってきたように思います。僕は原体験として悲しみがあって、それを表現しないといけないという思いがあって、そういった曲を書いてきたと思います。ただ、この悲しみは消えることはない。優しい言葉をかけてもらっても、悲しみ自体がなくなることはない。この悲しみは一生背負っていくだと思います。でも、でもね、本当は、僕は苦しみを歌いたいわけじゃない。本当はね、クサイかもしれないですけど、は勝つ」とか「世界が平和になればいいよね」とか、そういうことを歌いたいんです。こういう言葉は、嘘っぽいなと思われるかもしれないけど、だとしたら騙してやりますよ。僕はあなたたちを騙してでも、あなたたちに幸せになってほしい。今日をもってこの曲がもつ意味は変わります。」

このMCの後に鳴り始める月面旅行。筆者はつい先月、この曲に救われたところだったので、月面旅行は今回のライブで一番聴きたい曲だった。演奏してくれるだけで嬉しいのに、よりによってこのタイミングで、特別な曲として演奏されたことがとても嬉しかった。

そして「本当は苦しみよりも愛や平和を歌いたい」という内容が語られたMCも嬉しかった。苦しみをわかってくれる歌詞がCRYAMYの魅力であると思う一方で、CRYAMYが愛を鳴らすあたたかい音楽もまた、筆者は求めていた。CRYAMYだからこそ、嘘っぽく聴こえない、愛や平和を歌った曲がつくれるだろう。

でも「この悲しみは消えない」という内容のMCは悲しくなった。筆者は音楽活動を通して、カワノさん自身にも救われてほしかった。音楽活動が少し痛みを和らげてくれるというレベルではなく、悲しみがまるっきりなくなるレベルで作用すればいいのにと思っていた。一方で、安心した自分もいた。申し訳ない気もするが、どこまでいっても、CRYAMYの音楽から悲しみは消えないということに安心した自分が確かにいた。

突然ちがう音楽家を登場させて申し訳ないのだが、筆者は10年来の星野源ファンである。彼の初期の曲は、非常に孤独な音楽であった。彼の音楽はどんどんポップになっていき、今やJ-POPといえば星野源、という存在だろう。でも、彼の音楽から孤独が消えたことはない。どれだけポップでも、必ず背後に孤独がちらつく。筆者はそこが好きなのだ。

呪縛であり、魅力。そういうものを持っている音楽家は、表現者として無敵だと筆者は思う。星野源でいう孤独。カワノさんでいう悲しみ。カワノさんが「悲しみは消えない」と断言したことは悲しくもあるが、一方で、表現者として大成する人物であることが確定したような気がして、今後のCRYAMYの行く末がますます楽しみになった。筆者の中には「カワノという人物に幸せになってほしい」と思う一方で、「表現者として悲しみをずっと抱えていてほしい」という気持ちがある。この相反する気持ちの置き場所がどこにもなくて困る。

ただ、こんなことを言ったら変かもしれないが、とても美しくも見えた。「悲しみが一生消えない」という事実はある種の絶望だと思うのだが、「悲しみは一生消えない」とはっきりと口にしたうえで、凛と立ち、音楽を届けようとする姿があまりにもかっこよかった。もう、なんていうか…まじでついていく。

月面旅行のシーンだけで語りすぎてしまったが、筆者の一番覚えておきたい部分だったので、お許しを。

次に演奏されたのは新曲のALISA、続いて誰そ彼。月面旅行で感情が渦巻きすぎて、このあたりは放心状態だった(正直に言うスタイル)

そして「願いを込めて歌います」と言って始まったのはプラネタリウム。月面旅行のMCを聞いた後だったからこそ、プラネタリウムに込められた「願い」がとても切実に聴こえた。悲しみを一生背負う人が歌う、願いなのだ。願いの儚さを分かっていながら、それでも歌う願い

そして、本編の終わりが近づく。曲数は多いが、時間の流れをとても早く感じた。

プラネタリウムが作り上げたしんみりとした空気を突き刺すテリトリアル、crybaby、ten。怒涛の3連弾、これがまたかっこいい。全曲好きだが、ライブで見るなら激しい曲の方が筆者は好きだ。特筆したいのはcrybabyの始まり方。カワノさんが「60秒で何ができるーっ?」とフロアを煽って演奏スタート。この煽りが嬉しくてぶちあがった。なんというか、カワノさんが「ライブを楽しんでいる」かんじがして。カワノさんに煽られる人生を歩めている私たちは勝ち組である(断言)

本編のラストは、完璧な国。この公演にふさわしいラストである。建国物語ツアーは、完璧な国を建国するまでの物語だったのかもしれない。現実の世界は厳しさもあるが、ライブハウスでCRYAMYが魅せるこの時間、この場所に来れば、もしかしたら、生きていけるかもしれない。数十分から2時間程度で蜃気楼のように消えてしまう、刹那的な国だが、それでいい。騙されに行くのだ。現実を生きるために。

アンコール

メンバーが退場した後、フロアからアンコールの手拍子が鳴る。

アンコールに応えてメンバーが再登場し、4人揃ったところで、カワノさんがドラムのオオモリさんに何やらコソコソと相談を持ちかける。カワノさんがトコトコと歩いて、ギターのレイさん、ベースのタカハシさんの元へ順に向かい、コソコソ話。そして、袖に消え、スタッフさんにもコソコソ話。カワノさんのマイペースなかんじがなんだか可愛らしくて、フロアから優しい笑い声が起こる。

袖から再びステージに戻ってきたカワノさんは、オオモリさんの方へ向かい、自然なかたちでレイさんも二人の元へ。タカハシさんだけポツンと置き去りになっているのにカワノさんが気づいて、タカハシさんの腕を引く。

その一連の流れにフロアからまた優しい笑い声。演奏中とはうって変わったこのほのぼのとした空気感は、ライブに行かなければわからない。

メンバーがそれぞれの定位置につき、カワノさんの「ラブソングを歌います」という発言とともに、アンコール1曲目はtwisted。オオモリさんがセットリストの写真をツイートしていたが、そこにtwistedは書かれていなかった。コソコソ話をして急遽追加してくれたのだろう。一曲でも多くやろうとしてくれる誠実さが嬉しい。しかも、大好きな曲だ。

2曲目は新曲のWASTAR、3曲目はまほろば。カワノさんが本当に表現したいこと、ストレートに言えば“愛”がこの2曲には詰まっている気がする。

4曲目はこの日を締めくくる最後の曲。カワノさんが「一緒に生きてください」と言って始まった曲は、世界。筆者の考察など、もはや要るまい。

泣き崩れる友人の姿が視界に入り、「本当に来れてよかったね」と思った。あなたが隣にいて、私の完璧な国は初めて成り立つ。

まとめ

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。ご時世の関係もあって、苦渋の決断で来られなかった方も多かったライブだと思いますので、雰囲気だけでも伝われば幸いです。

つらつらと文章を書きましたが、ライブ直後はグッタリとしておりました。いつもライブ後はハイテンションになるタイプなのですが、今回はグッタリした自分に驚きです。おなかいっぱいになったのか、受け取ったエネルギーが大きすぎて疲労したのか、もう何がなんだかわからないのですが、しなしなのポテトみたいになりました。

ライブ後に話しかけてくださった方、しなしなすぎて話題とか振れなかった気がするので、すいませんほんと。これからはしなしなポテト、「通称しなぽて」と呼んでくださって構いません。大好きなバンドのワンマンライブなのに、同じようにしなった方がいらっしゃいましたら安心してください、この文章の熱量のくせに、私もしなぽてでございました。

マクドナルドでバイトして遠征費稼ごうかな

おまけ

余談ですが、ライブ直後のフロアの様子として「良いライブだったね!」と会話が弾んでいる人がいる一方で、しなしなになっている人もいて、反応がわかれていました。ちなみに、建国物語のツアファイでハイテンションになり、今回のライブでしなしなになった私とは逆に、建国物語のツアファイでしなしなになり、今回のライブでハイテンションになった友人もいて、この現象がとても興味深いなぁと思いました。

カワノさんの中から悲しみが消えないことに安心した人と悲しくなった人の差なのかなと思ったり。今回のライブに参加できず、このライブレポだけを読んだ人は、読んだ後にアガるのか、しなしなになるのか、どっちなんだろうなという興味もあります。もしも、読者の反応がわかれたら、わりと疑似体験できる文章になっているのかも、と思ったり。感想をいただけると嬉しいです。今後に活かします。
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