【CRYAMY】建国物語@渋谷クラブクアトロ【ライブレポ】

CRYAMYの-red album-リリースツア-「建国物語」。ツアーファイナルである15公演目として2021年11月14日に東京で開催されたライブのレポートです。CRYAMYの第一期完結と第二期の開幕を記録します。

もくじ

1.セットリスト
2.ライブレポ
3.まとめ
※パソコンで表示すると改行がぐちゃぐちゃになる仕様なのでスマホでの閲覧推奨です※

□1.セットリスト

1.ten
2.crybaby
3.戦争
4.ディスタンス

5.HAVEN
6.月面旅行
7.プラネタリウム

8.テリトリアル
9.ALISA(新曲)
10.まほろば

アンコール
11.WASTAR(新曲)
12.完璧な国
13.世界

□2.ライブレポ

2021年5月から始まったツアーがとうとうファイナル公演を迎える。思い出深いツアーのファイナル公演を前に緊張が高まる。

そして筆者が緊張していたのは「ファイナル公演だから」という理由だけではない。ライブ前日のGt/VoであるカワノさんのInstagramの投稿。投稿内の「どうもありがとうございました」という言葉には終わりを感じさせる雰囲気があり、(もしかしてバンド解散するんじゃ…)という不安に駆られた。

ゲストのAnalogfishはライブ中のMCで「落ち込んでいるカワノが電話をくれたことがあって、自分を頼ってくれたことが嬉しかった」という内容の話をしていた。それから、「今日はお祝いの気持ちでやります」という内容の言葉が何度かありかっこよさはもちろん、優しさとあたたかさのあるライブだった。「カワノが子どもの頃にテレビで見て知ってくれたという曲をやります」と言って『スピード』が演奏されたときには会場がひときわ盛り上がり、すごいものを見ているという感覚があった。

そして、いよいよファイナルを締めくくるCRYAMYのライブ。

レイさんの金髪は綺麗に染め直されてサラサラになっていて、大森さんは髪を後ろでくくるスタイル。今日は一段と気合が入っているような印象を受けた。

メンバー全員がステージに登場し、1曲目はten。一発目に拳のあげられる曲がくると否応なくテンションが上がってしまう。激しい勢いのまま2曲目のcrybabyで、ツアーファイナルに込められた気迫に圧倒される。そして3曲目は戦争短い曲が続く怒涛の三連弾である。

4曲目はディスタンス。ツアーではディスタンスとテリトリアルから始まるセトリが何度かあったので、ディスタンスが鳴るとツアーのライブが始まったなというかんじがする。ワンテンポ遅れているが、このときやっとファイナル公演が始まったことを実感した

4曲を終え、1回目のMCが入る。カワノさんが来場者への感謝と、メンバーも、ゲストで参加したバンドたちも、健康にツアーをまわれてよかった、という内容を語った。カワノさんはよく健康や「お身体に気を付けて」といった言葉を口にする。生きることや健やかであることは当たり前でないと分かっているからこそ、そういう言葉を大切にしているのかもしれない。

5曲目のHAVENが感情を込めて丁寧に歌われ、6曲目の月面旅行に続いて7曲目がプラネタリウム。冒頭の勢いのある4曲とは正反対に、じっくりと噛みしめながら聴ける3曲が続いた。激しい曲もじっくり聴ける曲もどちらも大好きなので、好きが溢れて困る。全曲を好きだと思えるバンドのライブはずっと楽しいから時間を濃く感じる。

プラネタリウムを演奏し終わった後に2回目のMCが入る。カワノさんの発言を以下に再現する。記憶を頼りにしたものなので、あくまでニュアンスレベルの再現だということを理解した上で読み進めてほしい。

「red albumは“負けた”アルバムです。最近知ってくれた人もいれば、昔から応援してくれている人もいて、音楽として琴線に触れたと思ってくれた人もいれば、深いところで何かを感じてくれた人もいるだろうし、もっと単純に、なんというか…英語はあんまり使いたくないんだけど…エモーショナルというか…こうグッときたとかでもいいし、それぞれの受け取り方をしてくれればいいです。

でも、僕にとっては、伝えたいことがあったのに伝えるのを諦めてしまった、そういう意味で負けたアルバムです。

初めてのフルアルバムということでレコーディングが終わって、出来上がったときは嬉しかったです。アルバムを出すっていうのはひとつの夢だったしね。

でも、ライブでやっていて、楽しいとか嬉しいと思うことばかりではなかった。本当は自分の心の底にある伝えたいものがあったのに、それを伝えられなかった。伝えることを諦めてしまった。これは敗北なんです。

でも、負けたことをみなさんに見てもらえたことには意味があったと思います。負けたこと、これも見せる必要があった。今まで見てくれてありがとうございました

アルバムで“負けた”と思うのは、伝えたかったのに受け取ってもらえなかったこともあったからです。これは大好きだった人に書いた曲なんですけど、受け取ってもらえませんでした。受け取ってもらえなかったのは、伝えられなかった部分があったからだと今は思います。受け取ってもらえなかったので、あなたにあげます。」

あなたにあげます、と言って手渡された8曲目はテリトリアルだった。テリトリアルを作ったときからred albumが完成した今に至るまで欠けつづけているピースがあるのだろう。そのピースとは伝えるべきだった、伝えたかったのに伝えられない何か。

9曲目は新曲。歌詞に「亀の水槽」が出てくる曲なんだけど曲名って公表されてたかな。知っている方がいれば教えてください。(追記:フォロワーさんが曲名は『ALISA』だと教えてくれました!ありがとうございます!)

10曲目にまほろばが演奏されライブ本編が終了。まほろばは「ただ言葉足らずを許し合って」という歌詞から始まる曲だ。「私の両目はあなただけのもの」という歌詞があり、重く美しい愛の歌だと筆者は解釈している。

「言葉足らず」という歌詞が「愛をもっていながら、それを伝えられないこと」を指すと考えればカワノさんが伝えられなかったのは愛とか優しさとか、そういう内容なのかもしれない。それが伝えられなかったという思いがあって、red albumを負けたと表現したのかもしれない。

『普通』という曲には「何も言えないなぁ」という歌詞があり、『テリトリアル』という曲には「簡単なこと言えやしないよ」という歌詞がある。いつも何かが言えないのだ。伝えることを諦めたこと、諦めさせられたことがあったのかもしれない。

でも、red albumからは愛や優しさを感じるし、ちゃんと伝えられているとも思う。そうなると負けだというカワノさんの言葉とは矛盾してくるので、そもそも筆者の解釈はいろいろ間違っているのかもしれない。もう少し考える余地がありそうだ。

話が脱線したが、ライブレポに戻る。

会場内にはアンコールの拍手が鳴り、それに応えてメンバーがステージに再び登場した。

カワノさんが「変な雰囲気になっちゃったね」と控えめに笑い、話し始める。
変な雰囲気というのは、「今まで見てくれてありがとうございました」とお礼を言うMCをライブ本編でしたものだから、解散ムードが出ていたことを指すのではないかと思う。カワノさんの意図は違うかもしれないが、解散するんじゃないかとヒヤヒヤしていた筆者にとっては「変な雰囲気」というのはそういう意味としか受け取れなかった。カワノさんの続きのMCを以下にニュアンスで再現してみる。

「僕と似たような苦しみを抱えた人がいると思っています。そういう人の支えになるような曲を多くつくってきたような気がします。受け取ってもらえないこともあるかもしれないけど、投げかけることを諦めちゃいけないと思っています。

でも、これからは、苦しいとか悲しいときだけじゃなくて、あなたが苦しいときも嬉しいときもそばにいたいです。泣いてる顔のときだけじゃなくてあなたに何か良いことが起こったときもそばにいたいです。

あなたたちのことが大好きです
これからは大好きなあなたたちのために生きます。」

そして演奏されたのは新曲のWASTAR。カワノさんが“これから”のCRYAMYに言及したことで(まさか解散か…?)という不安が吹き飛ぶと同時に、CRYAMYに変化が訪れることを理解した。

苦しくつらい、もっと言えば死にたい、そんな感情に寄り添う音楽を作ってきたCRYAMYが、嬉しいときもそばにいてくれる音楽になる

苦しいときはCRYAMYを聴いて、楽しいときは違うバンドを聴いて、と使い分けるのではなく、苦しいときはCRYAMYのあの曲を聴いて、楽しいときはCRYAMYのこの曲を聴く、というかんじで全部の感情にCRYAMYが寄り添ってくれるようになる可能性がある。

苦しいときにこの曲に救われたなぁという思い出も、この時期嬉しいことがあったらいつもこの曲聴いていたなぁという思い出も、全部CRYAMYになるのかもしれない。

例えばライブも、一日でいろんな面を見れるようになって今よりもさらに感情が大忙しになるのかもしれない。

もっと先のことを考えれば、アルバムが5枚ぐらい並んだときにそれぞれのアルバムにカラーがあって変化の過程を楽しめたり、気分によって聴くアルバムを使い分けたり、アルバムによっていろんなCRYAMYの一面が見えるようになるのかもしれない。なんて楽しみな未来なんだろう。

「苦しいときも嬉しいときもそばにいたい」というカワノさんの言葉に誰も置いていかずに包み込んでくれるような安心感と優しさを感じた。何かを失うような変化ではなく、今の良さにプラスして要素が加わるような変化をしようとしているという印象を受けた。

音楽ファンあるあるとして、好きなバンドの音楽がだんだん変わっていくのを徐々に感じはじめるというのがあると思うのだが、自分の言葉で第一期に幕を閉じ“これから”の話をしたのがカワノさんらしいと思った。人を傷つけず、でも自分の伝えたいことはちゃんと伝えられるように、言葉をひとつずつ選んで丁寧に想いを伝えるというのは今のカワノさんだからこそできることのような気がする。

ファンの心にとても敏感で、本当に寄り添おうとしてくれているのが分かる。そして誠意がある。音楽家とファンであると同時に、人と人との対峙なのだという意識を彼から感じる。

そして、「あなたたちのことが大好きです」という言葉。少し恥ずかしそうにしながらも、はっきりと「大好きです」と言い切るような言い方だった。

さらに「これからはあなたたちのために生きます」という言葉。「生まれてきて良かったなんて思ったことはないんじゃないかな」と歌っていた人が「生きる」と言ってくれたこと、そしてその意味をわたしたちだと言ってくれたこと。こんなに嬉しいことって他にあるのだろうか。

「あなたたちのために生きます」という一言が宝物みたいに自分の心の中で光り続けている。自分の身に何か不幸がふりかかったとき、この言葉が味方になってくれるような気がする。

新曲であるWASTARには「君のために生きる」という歌詞がある。“これから”のCRYAMYを象徴する曲になるのかもしれない。Sound Cloudというアプリをダウンロードして探せば弾き語りバージョンを聴くことができる。今回のライブで聴いたバンドバージョンがめちゃくちゃかっこよかったので音源化が早くも楽しみだ。

アンコール2曲目は完璧な国。曲が始まる直前に「~を伝えるのは絶対に正しい。絶対、絶対にそう。」というようなことをカワノさんが叫んでいたように思う。楽器が鳴っている中で叫んでいたので聞き取りにくかったのだが、「絶対」という言葉を繰り返していて、自分に言い聞かせているように見えた。今まで伝えることを諦めていた内容をこれからは伝えていこうとしているのかもしれない。

「最後に一言。一言だけ。これからもあなたたちのことは俺が救います」と言ってラストは世界。バンドのターニングポイントであるこのライブで「これからも」と言ってくれたことが嬉しかった。これからも救ってくれるらしい。なんて嬉しく頼もしいことだろう。

今までも十分すぎるくらい寄り添ってくれる音楽だったが、もっと心の近くに来ようとしてくれている気がした。見えない苦しみの奥の隙間まで染みわたっていたCRYAMYの音楽。これからは苦しみ、悲しみ、喜び、いろんな感情の奥の隙間にまで届けにくるんだろう。このバンドを好きになって良かった、この一言に尽きる。

□3.まとめ

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。この長文を読んでここまで辿り着いてくれた人とは気が合いそうです(笑)

自分の記録用であればネット上に公開する必要はありませんが、来れなかった人にも伝わってほしいという思いで公開しています。

MCの完全再現はできないこと、筆者の主観が入ってしまうことから、本人が伝えたかったこととはずれてしまうという怖さがライブレポにはあります。行った方は「ここはもっとこういう言葉だった」とか「こういうニュアンスの方が近いんじゃないかな」とか、気づいたことがあれば教えてください。ずれが少しでも小さくなるよう修正します。

また、デメリットを理解した上で公開するのは、来れなかった人の悲しみが少しでも癒えたり、既にファンだけどもっと愛が深まったり、そういうプラスの効果を期待しているからです。プラスの効果の方が大きくなるように、ライブレポは常に本気で書いていますので、もし筆者の文章が肌に合えば楽しんでいただければ幸いです。

筆者は最近あった下北沢シェルターのワンマンに行けず、本当に悲しかったので、ファイナル公演に行けなかった方の中にも、悲しみに暮れている人がいるかもしれないなと思っています。でも、CRYAMYのライブは過去を塗り替え続ける強さを持っています。筆者はツアーセミファイナルの大阪公演とツアーファイナルの東京公演が良すぎて下北沢シェルターに行けなかった悲しみを成仏できました。

彼らのライブはどんどん強くなるので、これからの行けるライブに行けばきっと塗り替えてくれるような気がします。解散じゃなくて本当に良かった!(笑)
〇CRYAMY好き同士良かったら繋がりましょう!
CRYAMYが好きすぎてしんどいので、語り合ってくれる人を常に募集しています*
あと、ライブ後に感想を話し合うことでライブの記憶を定着させているので話しかけてください(笑)

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