【ボイガル日記】ギターを持って河川敷に行った話

THE BOYS&GIRLS(通称ボイガル)の曲を弾きたくて始めたギター。3ヶ月練習したら、弾ける曲がちらほら出てきたので、友人と河川敷で弾くことにした。個人的な日記と、『二子玉川ゴーイングアンダーグラウンド』の話。

『よーいドン』でギターを始めた

2023年3月の札幌遠征時にギターを買い、THE BOYS&GIRLSの新曲『よーいドン』のリリースと同時にギターを練習し始めた。

原動力は、札幌の空気を吸いながらボイガルの曲を弾いてみたいという思いだったが、もう一つ、筆者にはギターでやりたいことがあった。それは、ライブハウスで出会った友人と、ギターを持って河川敷に集合するということ。

この記事は、「友人とギターを持って河川敷に集合する」という目標が初めて叶った日の記録である。小説のように読み進めてもらえたら幸いだ。
これは最近読んだ小説(関係ない)

7月17日、猛暑日、36℃超

ひとりの友人から連絡がきた。「ギターがある程度弾けるようになったら、河川敷に集まりたいって言ってたあれ、やろうよ」。

7月17日、駅に着くと友人の姿。声をかけると驚いた顔をした後、嬉しそうに笑った。

以前は毎週のようにライブハウスで顔を合わせていたが、最近は会う機会がグッと減った。いろんな音楽に出会うからこそ、行くライブも変わる。こうやってまた会えることが嬉しい。

駅から5分ほど歩くと、河川敷が見えた。「川の近くに行こう!」と言って草を掻き分けながらズンズンと進む筆者の後ろを、「痒い!草が腕にあたって痒い!」とケラケラ笑いながらついてくる友人。こういう馬鹿な時間が筆者は大好きだ。
少年少女のケモノ道 feat.夏

暑すぎた俺たちの夏

友人が「川に足をつけて弾こうかな」と言うので、大きな石を拾ってきて、川の淵に置いた。「はい、椅子これね」と半分ふざけて言ったが、ちゃんとそれに座って弾き始めたので面白かった。まるで原始時代のようなやりとり。思い出しただけで笑えてくる。

友人がギターを弾いているそばで、シャボン玉を吹いて遊んだ。100均で買った安さ重視の商品だからなのか、シャボン液の容器の蓋がきちんとめくれず、石で蓋を突き破って開けるしかなかった。筆者がギターを弾いているときは、友人がシャボン玉を吹いて遊んでいた。彼女も蓋を石で突き破って開けていた。やはりあの空間は原始時代だった。間違いない。

途中で暑さに耐えかねてコンビニにアイスを買いに行った。サクレのレモンってなんであんなに美味しいんだろう。友人はサクレのコーラ。二人してかき氷みたいなアイスを選んだから、夏祭りみたいだった。時折、空を見上げて「陽が落ちてきたね」とか「涼しくなってきたね」とか言いながらお互いのギターの音を聴いた。

二子玉川ゴーイングアンダーグラウンド①

この日、友人とギターを持って集合したのは、多摩川の河川敷だった。THE BOYS&GIRLSには、“多摩川”が歌詞に出てくる『二子玉川ゴーイングアンダーグラウンド』という曲がある。筆者は多摩川の河川敷で、この曲を弾きたかった。

友人にもその話をしていたから、彼女は練習して、弾けるようにしてくれていた。当の筆者は技術が及ばず、まだ弾けなかったのだが、彼女が弾き語るのを隣で聴いた。最高だった。

家で練習していた時点で、『二子玉川ゴーイングアンダーグラウンド』を弾けるようになるまでにはしばらく時間がかかりそうだと思ったから、筆者は、GOING UNDER GROUNDの『トワイライト』を弾けるようにしてきていた。『二子玉川ゴーイングアンダーグラウンド』の“ゴーイングアンダーグラウンド”の部分だけでも、という気持ちである。曲は筆者の好みと弾きやすさで選んだ。

陽が落ちていく空の下で『トワイライト』を弾いた。「風と稲穂の指定席へ座る 上映間近のアカネ空」や「主役が君と僕の脇役のいないストーリー」という歌詞が、こうやって、ふたりで河川敷で過ごしている、今の状況にぴったりなんだと熱弁したら、友人が「いいね」と言って笑ってくれた。嬉しかった。

二子玉川ゴーイングアンダーグラウンド②

各々で好きな曲を弾いている間、陽がどんどん落ちていって、「今だ!」というタイミングがきた。オレンジの色がグッと濃くなって、もうこれ以降はオレンジにはならない。なるとしたら紺色の夜空だろうなというような、夕焼けのピーク。

コードを書いたノートをパタンと閉じ、「二子玉川ゴーイングアンダーグラウンドの時間だ!」と友人に伝えた。そして、おもむろにスマホから『二子玉川ゴーイングアンダーグラウンド』を流した。一緒に音楽を聴こうのコーナー、突然の開幕である。

「聴きながら見てみ?この景色。やばいよ」と言いながらギターを置いた。イントロがゆったりと外の空気に染み渡っていった。

最初は弦を一本ずつはじく弾き方なのだが、途中でジャカジャカとした弾き方に変わる。その切り替わった瞬間に、「あ~~~、良い」と友人が言ったのが聞こえた。「めちゃくちゃ良いでしょ?!?」と前のめりな返答をしながら、ふたりで川のすぐ近くに座った。

間奏がくるたびに、「夕日が反射する水面が揺れるのを見ながら聴くのが好き」とか「“電車の窓”という歌詞があるから、電車が通ったときは光る窓に注目すると良い」みたいな話をした。

ボイガルで知り合った友人ではないから、あまり興味がないかもしれないとは思いつつ、話したいから話した。「うんうん」と聞いてくれたのが嬉しかった。空を見ながら、ふたりでひとつの曲を聴く時間が大切だった。

CRYAMYの『まほろば』

夕日が沈んで、辺りが暗くなった。譜面も見えなくなったが、最後に一曲弾こうということで、スマホの明かりで譜面を照らして、一曲だけ合わせた。CRYAMYの『まほろば』という曲だ。

練習してきたコード進行はお互いに違うものだし、右手の振り方のパターンも違うし、間奏は筆者が弾けないので飛ばすしかなかった。ガタガタの演奏である。

友人はギターも歌も上手いから、ひとりで演奏した方がずっと聴き心地の良いものになるだろうに、筆者に合わせて、ゆっくりと演奏してくれた。優しさに溢れた未完成な『まほろば』が愛おしかった。

CRYAMYは、筆者と友人を出会わせてくれたバンドだ。彼女とはとにかくいろんな話をしてきたし、福岡だろうが札幌だろうが、どこへでもライブを見に行った。時を経て、お互いにギターを持って、一緒に弾いているのが不思議なかんじがした。こんなに尊い時間って、あるだろうか。
“何度でもその手を取ろう それを時間と呼ぼう” まほろば/CRYAMY

二子玉川ゴーイングアンダーグラウンド③

陽が落ちきったのを確認し、「真っ暗になってから聴くと、聴こえ方が変わるんだよ」と言って『二子玉川ゴーイングアンダーグラウンド』を流した。一緒に音楽を聴こうの会、第2幕、開幕。

隣で友人が「うわ、すごいね。さっきと聴こえ方全然違う。」と言った。筆者が作った曲ではないが、「すごいでしょ。」と答えた。友人が「“その先へ僕を連れてってよ”って歌詞がさ、夕方に聴いたときは、もっと前向きに聴こえたんだよね」と言ってきたとき、なるほど、と思った。

この歌詞は、先の場所に進みたいという前向きな意味にも捉えられるし、この場所から逃げたいというような、後ろ向きな意味にも捉えられる。

筆者の個人的な感覚にはなるが、この曲には、闘志と諦念の両方が詰まっている気がしている。それから、寂寥感も。時間帯や見える景色によって、どの部分が色濃く聴こえるかが変わるのではないだろうか。

こうやって、ボイガルの楽曲を外で聴くと、音楽家が込めた内面的な感情と、外の空気や景色が、呼応する瞬間がある。生きているみたいな楽曲たちだなと思う。友人と、楽曲が拍動するのを一緒に感じられた気がした。

また河川敷で

寝転んで星空を眺めながら少し話した後、荷物をまとめて帰る支度をした。力を入れてギターケースを持ち上げる。

「ボイガルの曲を練習しておくよ」と友人が言うので、「CRYAMYの曲を練習しておくね」と返した。次に会うときには、一緒に弾ける曲がいくつか増えているだろう。並んで駅まで歩いた。

途中まで同じ電車だったから、次の日程は仕事のシフトが出てから決めようとか、次はどこの河川敷に行こうとか、そんな話をしながら、電車に揺られた。

別れの駅に着くとき、友人が「あっ」と声をあげた。「電車の窓から多摩川を見るの忘れてた」。「本当だ!」という気持ちと、「めちゃくちゃしっかり説明聞いてるじゃん」という気持ちが合わさって、思わず笑ってしまった。

夕日を見ながらふたりで聴いたとき、間奏で「電車の窓映る多摩川」という歌詞の話をしたのだ。言い出しておきながら、すっかり忘れていた。
次に会えたら 今はできなかったことを

あとがき

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。この日に抱いた感情を目に見えるかたちで残しておきたいと思い、この記事を書きました。

筆者は吹奏楽部や軽音楽部にも所属したことのない、音楽知識の全くない人間です。0からのスタートでも、3ヶ月くらい頑張れば、ある程度楽しく弾けるようになるものですね。

この日の河川敷で、人と音を鳴らすことでしか得られないワクワクした気持ちや、ほわっとした温かい気持ちがあることを知りました。『二子玉川ゴーイングアンダーグラウンド』と『まほろば』という曲を聴くと、このときの気持ちが蘇るようになったことがとても嬉しいです。

それから、この記事では、ボイガルの楽曲の魅力も伝わればいいなと思っています。ボイガルのライブに行けば、命がほとばしる瞬間を見ることができるし、自分の存在を強い力で肯定してもらえるような気持ちになります。ボロボロの汗だくヒーローも、熱気と愛に溢れたフロアも大好きです。

でも、ひとりかふたりぐらいの少人数で、外で聴いてみてほしいとも思います。ライブとはまた違う感じ方ができるような気がしています。ボイガルの楽曲の中に流れている安心感や包容力、暖かいような冷たいような、分からないけれど、ただそこに在ってくれるという確かな信頼感は、地面や空や風によく似ているような気がします。

自分と自然だけの空間で、ボイガルの楽曲を聴くという体験をしてみてほしいです。もちろん、音楽の楽しみ方は人それぞれで、何かを指定するつもりはありませんが、この日の河川敷で一緒に聴いた友人が「ボイガルってすごいね。こういうことか。」と言って笑ってくれたのが嬉しかったので、伝えたくなりました。

ボイガルの音楽ってすごいんです、本当に。音楽を外で聴くためだけに河川敷に出かけてみる休日、おすすめです。興味が出たらぜひ。長くなりましたが、このへんで。
フォローや感想などお気軽に!フォローバックします◎

Twitter☞ @pony_enseinote
Instagram☞ pony_enseinote

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です