【ボイガル日記】初雪の朝、レン太に乗ってどこまでも《後編》

THE BOYS&GIRLS(通称ボイガル)のツアーファイナルが延期になったものの、飛行機をキャンセルできなかったので、予定通り4日間、札幌に行ったら、ボイガルをさらに好きになってしまった話。ファンの日記。

《3日目》2023年11月11日土曜日①

前日の夜は月寒公園に星を見に行った。宿に帰ってシャワーを浴びて、寝たのが深夜2時くらい。にもかかわらず、この日は朝5時に起きた。5時55分に友人と待ち合わせをしていたからだ。

ボイガルの『すべてはここから』という曲に、「今日も聴こえるぜ 朝6時の鐘」という歌詞がある。それっぽい寺の前に朝6時に待機し、鐘が鳴るかを確認してから、日の出を見に行くという計画を立てていた。

筆者はこういう謎の計画をよく一人で立てているのだが、それに友人が乗ってくれたのが嬉しかった。5時台に起き、身支度をして宿の玄関へ。

外はきっと寒いだろうなと覚悟を決めて、宿の扉を押し開けた。目の前に広がったのは、ちらちらと舞い降りてくる雪たち。札幌の初雪だ。ライブがなくなった夜を越えて、次の日の朝に初雪が降るって、なんてロマンチックなんだろう。
ナトリウムランプに照らされる初雪
集合場所にしていた寺には、徒歩数分で着いた。鐘の前で待っていると、向こう側から友人が歩いてきた。「初雪ですね」とか「寺の人が鳴らしにくるのか、自動で鳴るのか」とか話しながら、2人で寺の鐘が鳴るのを待ってみたが、朝6時を過ぎても鐘は鳴らなかった。はい、ハズレ!(笑)

「いや~、鳴らないですね」と笑い合って、鐘の写真を撮ったりした。早朝でまだ暗い初雪の中、寺を見ていると、大晦日みたいな気持ちになる。まだ11月なのに、と思うと可笑しかった。
早朝+初雪+寺の鐘≒大晦日(鳴らない)
日の出は6時20分頃だったので、少し歩くことにした。日の出を見たいと思った特別な理由はない。ただ、いろんな時間帯の札幌を知りたかったし、感じたかった。いろんな空の色を見たかった。

歩いている間も空の色が変わっていくので、どんどん日が昇っているのは分かったが、建物が多く、直接日を見るのは難しそうだった。諦めて帰ろうとした時、友人がふと立ち止まったので、視線を追って振り返ると、日が出ていた。

それから青空になるのは一瞬だった。集合したときは夜みたいだったのなと思うと、不思議な気分だった。数十分歩いただけなのに、一日を共にしたかのような。

タイムスリップしたみたいな不思議な気持ちに包まれたまま、解散した。次に会うときは東京だ。
豊平川沿い、札幌の日の出

《3日目》2023年11月11日土曜日②

日の出を見た後、一旦宿に帰って朝ごはんを食べ、必要な荷物だけをリュックに詰めて準備をした。今日はいよいよ自転車に乗る日だ。

ボイガルの『すべてはここから』のMVを見てから、ずっと自転車で札幌を走ってみたいと思っていた。MVのルートを走るのも良いなと思ったが、1日あるので遠い場所まで行ってみることにした。マップを見て目についたのは、モエレ沼公園。豊平川沿いをずっと走って行けば着きそうだった。

自転車はポロクルというレンタサイクルを利用した。札幌の街中に駐輪場があり、どこから借りて、どこへ返しても良いという便利なサービスだ。宿に一番近い駐輪場で自転車を借りて、サイクリングスタート。

自転車の名前はレンタサイクルからとって、レン太。筆者が勝手に名付けた。シンゴさんの今のブログタイトルは“愛葉集”だが、実は、“ゴン太に乗ってどこまでも”というタイトルだった時期がある。シンゴさんは自転車をゴン太と呼んでいたので、筆者も便乗して名前を付けてみた。
行くぜ!レン太!!!
まずは豊平川に出て、川沿いをひたすら走った。空は快晴の青、空気は初雪が降った後の冷たさがあって、すごく気持ち良かった。人もいなかったので、昨日の雨でできた水溜まりの上を、水しぶきをあげながら、思いっきり駆け抜けた。

雨上がりの快晴の下、自転車で風を切りながら歌うのに、ボイガルの曲たちはぴったりだった。本当にどこまでも行けそうな気分になった。悩んだ時は、札幌に来てボイガルを流しながら、豊平川沿いを自転車で走るのが一番良いかもしれない。

途中で、白い点々が目の前をサーっと横切ったときは、思わず自転車を停めて動画を撮った。絶対に雪虫だと思った。でも、白い点々が地面に着いた瞬間をちゃんと見たら、溶けて消えてしまった。いや、雪なんかい。初雪が降ったから、きっともう雪虫はいないのだろう。また1年後だ。
豊平川沿いの光に反射する水溜まり
しばらく進むと、豊平川を離れて街へ向かった。街を抜けたところにモエレ沼公園があるのだ。

ところが、いきなりめちゃくちゃ雪が降ってきて、吹雪に遭った。傘もないし、自転車に乗ったまま吹雪に打たれるしかなく、為す術なし。

街中なのに人は見当たらず、何故こんなときに筆者は自転車に乗っているのだろうかと不思議になった。なんかいろいろと間違えている気がする。
ギャアアアアアアアアア!!!!!
一番近くにあった喫茶店に逃げ込み、雪が止むのを待ってから、サイクリングを再開し、モエレ沼公園に到着。ガラスのピラミッドの展望台から全体を見下ろした後、丘に登った。この丘に筆者は登ってみたかった。

今回の札幌遠征では、いろんな時間帯の札幌を感じて、いろんな空を見ることを目標にしていたから、丘の上から見える空に興味があった。丘は乗り物禁止なので、自転車を停めて、歩いて登った。

雪は降っていなかったが、風が異常に強くて、災害レベルだった。なんとか丘の上に辿り着いたときは、風に飛ばされそうだったので、ほふく前進に近い状態。

空を見る余裕なんてなく、とりあえず自分が今どういう状態なのか気になりすぎて、何枚か自撮りをした。滞在時間5秒で丘を降りた。

のちに写真フォルダを見たら、強風で髪がぐしゃぐしゃになっている写真がいっぱい撮れていて、ひとりで爆笑してしまった。友人に見せたら、「yonigeみたいだね」と言われたのも面白かった。『girls like girls』のジャケット(笑)
強風の中でなんとか撮った、丘の上からの写真
帰りは豊平川沿いではなく街中を走った。モエレ沼公園でスタンプラリーの台紙をもらったので、そのスポットを周りながら帰ることしたのだ。

ロイズとサッポロビール博物館でスタンプを獲得し、3つ溜まったので台紙を応募箱に入れた。札幌市東区から参加賞のグッズが届くらしい。何か分からないが、楽しみにしておこう。
札幌市東区のスタンプラリー
中央区に戻ってきて、喫茶店でシチューを食べたら、外は夜になっていた。大通公園を待ち合わせ場所にし、友人と合流。テレビ塔を眺めながら、いろんな話をした。

どうやってボイガルに出会ったかとか、出会った時どう思ったかとか、自分にとってどういうバンドかとか。ボイガルはいろんなストーリーを纏ったバンドで、その軌跡も魅力のひとつだ。でも、ボイガルだけではなくて、ボイガルを好きな人の中にも物語が流れているんだなと思った。

人の紡いできた物語を聞くのも、自分の紡いできた物語を聞いてもらうのも、どちらも好きだ。寒空の下、筆者はホットレモンティー、友人は缶のコーンポタージュを飲みながら、ずっとボイガルの話をしていた。
左手にテレビ塔、視線の先に丸井今井

《4日目》2023年11月12日日曜日

最終日。夕方には空港に向かわなければいけない。11時30分頃に、昨日テレビ塔を眺めながら話した友人と再び集合した。集合場所は、“最低な一日”が開催されていた河川敷。“最低な一日”というのは、シンゴさんが夏に開催していた催しだ。
“最低な一日”の開催地(豊平川の河川敷)
友人が実家に置いてあったエレキギターを持って来てくれたので、交代しながら弾いた。筆者が1曲目に弾いたのは、『その羅針盤』。一番弾きやすいので、いつも最初はこの曲を弾く。

「夏が終わる前に」という歌詞から始まるので、季節外れかなと思ったが、歌詞とコードを見ながら弾いているとき、「初雪」が歌詞に入っていることに気づいた。

「灯せヘイホー、涙までレッツゴー その先で初雪は待つ」

初雪が降ったのは、ライブがなくなった2日間を越えたその先、3日目の朝だった。ライブがなくなっても、初雪は待ってくれていたのだ。なんだ、歌詞どおりじゃないか。このバンドは、どうなったって物語を紡いでしまうんだなと、思わず微笑んでしまった。

「ねえ、この曲さ、歌詞に初雪が入ってるよ」と友人に言うと、「本当だ」と頷いてくれた。
楽しみにしていたライブが急になくなったこと、それでも札幌に来てしまったこと、札幌でいろんな空を見たこと、河川敷でギターを弾いたこと、歌詞に初雪を見つけたとき、その話を聞いてくれる人がそばにいてくれたこと、それが嬉しかったこと。これはぜんぶ筆者とボイガルの物語だ。

こうやって、物語が積み重なって、どんどん好きな曲が増えていく。札幌のこと、ボイガルのこと、どんどん好きになっていく。ツアーファイナルの延期日程は1月14日になった。次はどんな物語が生まれるだろうか。ぜんぶぜんぶ、抱きしめたいなと、そんなことを思う。
札幌遠征、最終日のセットリスト
しばらく“最低な一日”の場所で交代しながらギターを弾いたが、雪が降る中では、寒すぎて指が上手く動かなかった。最後の方は、「寒すぎる!限界だ!」とか言いながら、走りまくった。走ればあたたかくなるかと思ったが、普通に寒かった。

札幌の寒さに屈した筆者と友人は、中島公園まで歩き、駅で解散した。次に会うのは東京だろう。でもまた、札幌でも会えるかもしれない。
「またね、札幌。」@中島公園

あとがき

ここまで読んでいただき、ありがとうございました。とても個人的な日記ですが、自分にとって大事な物語だったので、文章にして残しました。

それぞれの都合と感情と選択があったと思うし、これからもそうだと思いますが、札幌はライブがあったらもちろん最高だけど、なくても楽しい場所なのだということが伝わったら嬉しいです。

友達がいるからこそできることもあれば、一人だからこそできることもあります。この4日間は人がいたりいなかったり、友達といる時間も、一人の時間も大事にできたような気がして、それが個人的にはとても充実感を生んだなと思います。関わってくれた人、どうもありがとう。

札幌公演の延期日程は1月14日。札幌は真っ白な雪景色でしょうか。そんな中でボイガルのワンマンを見られるって本当に最高だなと思います。本当に楽しみです。明日からまた頑張らなくちゃ。
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